1965年！エレキブーム→1966年！エレキブームの終焉
2年ほど前のFOOBER COLUMで日本人にとってのエレキ・ギターとロックの関係のほんの一部分を取り上げ「エレキ禁止令」とは何ぞや？というお題で1965年のエレキ事情をお話ししました。今回はその続編としてエレキブームの衰退とカレッジ・フォークの台頭に関しての話題を書きたいと思いペンを取りました。
エレキブームは1964年に始まり1965年に大爆発！しかし1966年には早くも衰退へと向かいます。当時を経験していない、後追い検証の中にはエレキを持ってベンチャーズを演奏していた若者がビートルの来日を機にビートグループに刺激を受け、エレキが廃れてグループサウンズになったという、まことしやかな説があります、しかしそれは完全な間違いではありませんが本丸を見落としたもので、[事実]とはかなり違ったものである事を知らなければなりません。
怪物と化したエレキブームを鎮静化させた重要な要因のひとつに1966年から表面化したフォークの台頭があります。エレキの衰退はそれを論ぜずに何も語れません、そのフォーク・ブームの変貌（モダンフォークからフォークロック～ＧＳへの流れ）を詳細に精査すると、エレキブームとＧＳブームが直接結びついたものではない事実をも理解する事になります。<br>
********************マイク真木の事********************
1966年春！「日本にもモダン・フォークが生まれた！」という大見出しでマイク真木の「バラが咲いた」が発売され公称30万枚のヒットを記録しました！
そのジャケットに写るマイク真木のスタイルは！頭は7：3、シャツはボタンダウン！コットン・パンツとコイン・ローファー！時計はオメガ！抱えるギターはマーチン！まるでメンズクラブから飛び出した絵に描いたような若者でした！
そして、それは私にとって驚きでもありました！伝わりにくいかもしれませんが...長髪こそ格好良いはずなのに7：3分け！エレキこそ格好良いはずなのにフォーク・ギター？大人にうるさいと言われる曲ほど格好良いはずなのに、文部省唱歌のような穏やかな曲！そういう逆の意味での驚きです。
エレキを支えた屋台骨が町の商店街の学生や高卒、中卒の職工の皆さんとするなら、そんなブームに反旗を翻すが如く浮上してきたフォーク・ソングは「大学通う裕福な学生たちとその進学校へ通う山の手―な若者たち」の音楽でした！！1966年から1967年にブレイクした森山良子、荒木一郎、ブロードサイド・フォー、フォア・ダイムスといった新鮮な若者たちを見ればに一目瞭然であり！彼等によるフォークソングはこの時期、間をおかずに大ヒットしました。
***************************エレキは不良*****************************
1966年下半期からフォークヒットが数多く生まれた理由のひとつにエレキ以前から存在するモダンフォークを愛する連中によるエレキへの反動と捉える人も多くいます。しかし、最大に理由はエレキブームが不良少年の温床と化し「エレキは悪」として大人社会から締め出されるようになったという事ではないでしょうか。（単純すぎるサウンドに一般リスナーが飽きてきたという事もあるでしょうが..）まあ、それらの複合作用でエレキ離れは急速に進み、若者の眼は一気にフォークへ向かう事になったのです。また別の側面として、社会悪となった「エレキ」に対し大人達が展開したフォークのプロモーションもあります。業界はコアとなるアーティストに日本人を立ててそれに臨みました。エレキブームの際には、異国のベンチャーズがヒーローだったという事を考えると、この日本人を矢面に立てた戦略は洋楽ファンをも取り組み、さらに歌謡曲（邦楽）ファンをも取り込むという大成功をおさめる事になります。そしてグループサウンズの布石もここで打たれたと考えるべき事件でした。
******************ザ・サベージの事**********************
そんなプロモーションによる成功の一例として前途のマイク真木や森山良子は筆頭に挙げられでしょう、しかしエレキブームの終焉を身を持って体験した例はザ・サベージです、サベージはシャドウズのヒット曲から得たグループ名でエレキ合戦番組で最高得点をマークしプロ入りした筋金入りのエレキインスト・バンドでした（寺尾聡さんの在籍したバンドです）しかし、そんな彼等にレコード会社（プロダクション？）はエレキとは無縁の牧歌的なフォークソングを宛がったのです。最初のシングル「いつまでも、いつまでも」はフォーク・ソングとして（1966年6月）大ヒットとなります。これも業界が仕掛けた成功例のひとつではありますが、エレキの終焉とフォークの台頭を告げた象徴的な出来事だったと思っています。ではそのフォーク・ブームがどのようにＧＳに結びついていったのか？ それはエレキ衰退期にフォークになびいたエレキサウンド撤退組と、時流に流されずエレキに身を任せたテケテケ残留組との分岐のお話しをしなければなりません。それは次回したいと思います。
★★注釈★★
サベージの「いつまでもいつまでも」を単にフォークソングとした私の持論に異議を唱える方もいらっしゃると思います。それはエレキサウンドの代表を「パイプライン」とするなら、そこに入らない所謂エレキ以外の若者の音楽をすべて「フォーク（フォーク・ロック）」と位置づけしているからです。無理がありますがご了解ください。またここで断言できますが、一般的にはロックもＧＳ（ジャンルを表現する名詞として）もまだ存在していない時代です。フォークという言葉がそれらに近いサウンドをすべてを包括していたというのが事実です。下のレコードを見ればスパイダーズもカーナビーツもフォークのプロモーションの下で浮上してきた事がお分かりいただけるかと思います。
★★★★★★フィリップスがスパイダーズをフォーク・グループとして売り出そうとした証拠品 1966年9月★★★★★★
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★★★★★★ワイドル・ワンズが「自分たちはエレキバンドじゃねーぞ！フォークロックだぞ」と主張している証拠品1967年2月★★★★★★
★★★★★★カーナビーツをフォークグループとするにはすでに無理が有ったんじゃないでしょうか？1967年6月発売！キャッチコピーに
日本のフォーク・ポップス界に遂に登場と書かれており、まだGSの文字はありません！
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★★★★★★1967年10月発売のテンプターズのデビュー盤！遂に遂にグループ・サウンドの文字が登場します！フォークがGSに変わった時期です
